背負う重さ

決して自分は優秀と思ったことも特別だと思ったこともない。
成績も悪い方、スポーツも出来ない、ルックスも全然。
だが私には深く根付いている心のキズがある。

私にとっての高校時代はトラウマでしかない。
人間関係を構築するのが非常に苦手でクラスの中でも友達は何人しか作れなかった。
部活動もしていたけど前述通りスポーツの才能がないので一向に芽が出ない状態。
しかも部活動の仲間との関係は全く息が合わず先輩達との関係と共に月日を追う毎に深刻になっていく程である。(2つ上の先輩とは上手くいっていたのですが一つ上・同年代で親しい間柄の人はゼロ。)
当然いざこざなんてしょっちゅう起きていましたし。いつの間にかポツンと一人で黙々と練習をこなす日々が続きました。
仲間との会話もない中、ただ一人で―――。

   ―――なんでそんな状況でも部活を続けたのか?―――
    ―――「絶対辞めるもんか。」と意地になっていたから。―――

ただそれだけで練習を続けていました。
それにその部活動自体や顧問の先生は私が心の底から気に入っていましたのでどんな困難があろうとも続けてやろうと思っていました。
いつしか部内で私を対象にした陰湿なイジメも発生してきていました。
根が真面目なのでイチイチ反応して相手はそれを楽しんでいるように思えました。



そんな確執のある雰囲気の中で一年間(正確には2つ上の先輩が引退してから)が過ぎて行きました。
進級に伴い、後輩が出来ました。
なんとかこの凍った雰囲気を解消するために私は積極的に後輩に話しかけました。
ですがそう簡単に出来ませんでした。むしろ逆効果で孤立を深めるだけでした。
勉学公私に思い通りにいかない毎日でした。まるで真っ暗闇の水中でただ一人溺れていて必至に藻掻いているように。
毎日私は部活の仲間とは一言も会話することなく、練習を終えたら避けながら帰る日々になりました。
勿論そんな生活していて楽しいわけがありません。部活でやることなすこと“苦しい”としか思えませんでした。



夏休み、(私が所属する)ボーイスカウトの“日本ジャンボリー”という全国大会へ奉仕で参加することになり、開催地の大坂へ向かいました。
そこで私は衝撃的な出来事を体験しました。
非常に開放的でアットホームな雰囲気。周囲の仲間とのやり取りが非常に楽しい。
わずか一週間ながらこのまま一ヶ月も半年でも一緒にいたいなぁ、と心底思えました。
そこで体験して最後に浮かんできた一つの投げかけ―――「あぁ、なんで無理してまで縛られなければならないんだ?」と。
地元帰省後に部活は皮肉にも盆休みになってしまい結果的に半月も部活を休んだことになりました。無論それを狙って参加したわけではなく、自主的に参加したわけですので。

部活にはその後数回参加しましたが、それ以降ぷつりと緊張の糸が切れたように今までがむしゃらに守り通してきた意地が消えてなくなっているのに自分自身気付いていました。

さらにそれから数週間後に学校の補習が始まってから部活を辞める決定打が出ました。
一年の時からずっと親しくしていた親友が突然部活を辞めると言ったのです。
何故?と私は聞くと「大学へ入る勉強をする」と言いました。
彼は部活でもそれなりに結果を残し、勉強も中の上とそこそこ良かったので衝撃的でした。
それが引き金になり私は部活に顔を出さなくなり、一回仲間が「部活来いや。」と優しく語ってくれましたが一回行ったきりで顔を出さなくなりました。


2週間後、退部を決意。悔いは残っていませんでした。


それからトラウマとの格闘に追われる日々が始まりました。
一週間に一回に必ずと言って良いほど夢の中に部活の嫌な思い出が蘇り、部活の元同僚の顔を見ると辛い日々を思い出して心が苦しくなりました。



現在でもそのトラウマに苦しめられています。夢の中に出てきますし、悲しいかな人の顔を覚えるとなかなか忘れられないせいか昔の顔ですら今でも鮮明に覚えています。
私は一生この辛い過去を背負って行かなくてはなりません。
いつぶり返してくるかわからない心の古傷といつどんな数奇な出来事が待ち構えているかもしれない運命と一緒に。
逃げたくても逃げられません。逆に面と面を向き合って話し合わなくては解決できません。
しかしながら未だに触られると塞がっていないキズが抉られるように痛みを発します。
時間が経てば塞がってしまいますが、意外に特効薬が存在するかもしれません。
私は自然とキズが完治してくれることを信じています。