購入書籍・2014年3月編

・早見俊著『常世の勇者 信長の十一日間』
伊東潤著『峠越え』
青柳碧人著『浜村渚の計算ノート 5さつめ 鳴くよウグイス、平面上』
池井戸潤著『ルーズヴェルト・ゲーム』
 以上。

 今月は書店に行く度に購入したい本があるという、妙に縁がある月でした。しかも今のところ、ハズレなし(『ルーズヴェルト・ゲーム』に関しては今日購入したばかりなのでどうなるかは分かりませんが、中身をさっと目を通した段階ではハズレっぽくないと思ったので、自分の勘を信じたい)。

 『常世の勇者 信長の十一日間』
 歴史小説というのは時間の経過が非常に極端で、一日の出来事を濃密に書き表すこともあれば、一ヶ月どころか数年が一気に飛んでしまうということも。
そんな中で、信長が美濃へ侵攻するキッカケを十一日間という比較的短い期間に着目して描いたということで珍しい形の作品になっています。
 無神論者として描かれがちな信長を信仰心の厚い人物として表現しながら、機能性を重んじるという相反する人物を見事に表現していて、なかなか面白い作品となっています。
 そして信長を支える秀吉・勝家・長秀、後々仕えることになる光秀、さらに信長の宿敵である龍興や当時京を牛耳っていた松永久秀など、歴史好きには馴染みのある面々も揃っており、それぞれがしっかりとした味を出しています。
 「あぁ、こういう形もあるのか」と感じさせた、内容のある作品でした。

 『峠越え』
 『城を噛ませた男』で知られる伊東潤さんの新作。こちらの題材は徳川家康ですが、こちらも武田滅亡直後から伊賀超えという、比較的短い期間に着目した作品となっています。
 本能寺の変による秀吉の中国大返しは有名ですが、それに勝るとも劣らない家康の堺から三河への逃避行は意外にも知られていません。信長が倒れた後の治安が極端に不安定な畿内を僅かな供回りだけで脱出することは並大抵なことではなく、これを乗り切ったことにより一躍天下人となった秀吉にも劣らない実力者として成長することに繋がったと言っても過言ではないでしょう。
 家康を題材にした作品は少ないですが、なかなか読み応えのある作品でした。ずば抜けた才能を持たない者としての苦悩や周囲の武将達に翻弄される中で、一つ一つ成長していく姿が描かれています。
 もし興味を持たれた方がいらっしゃいましたら、是非書店にて一度ご確認してみて下さい。