ドーナツが好きな女の子の物語

“美味しいドーナツづくりに情熱をそそぐ留衣。純粋で天然な彼女を描く、甘くて心躍る物語。”

 男やファッションに興味なし。出世や金にも興味なし。垢抜けなくて野暮ったい灰庭留衣は、無類のドーナツ馬鹿だった。他人から変わり者扱いされても気にすることなく、一日中、美味しいドーナツのことばかり考えていた。
 留衣が勤めるのは、首都圏に展開するチェーン店「羽のドーナツ」。代々木本社の開発部に所属する彼女の夢は、食べた人が笑顔になるドーナツ、食べた人を幸せにする奇跡のドーナツを作ること。
 そんな彼女が巻き起こすトラブルの連続に、はじめは呆れていた周囲も、やがて――。
 甘くて愉快で美味しい、心躍る物語、ぜひご試食あれ。

 久しぶりのクリーンヒット作。最初の10ページは一応目を通したものの、購入した決め手はカバーイラストということで少し期待値は低めでしたが、予想以上に面白かったです。メディアワークス文庫というレーベルはラノベではないがちょっとラノベっぽい本が多いような印象だったので、不安もありましたが。
 物語はドーナツのことをこよなく愛する留衣を中心に描かれていますが、この留衣という主人公が実に見ていて面白いし可愛らしい。とあるキッカケで一緒に仕事をすることになった奏子と時乃の二人も留衣に振り回されるが、その留衣を通して二人も人間的に成長していくことに。
 一番の推しは、なんと言っても主人公である留衣のキャラクター。彼女を追いかけていったらいつの間にか物語が終わっていた、という感じです。話の流れ自体もそんなに肩肘張ったものではないので、あっさりと読める一冊となっています。
 もう少し話を掘り下げることも出来たんじゃないかなー、と思ったりしましたが、これはこれで良しということで納得しています。下手にあっちこっちに話を振って逆に面白みに欠けるよりはマシだと。この一冊で全て物語が完結しているので、ちょっと疲れた時なんかに読むといいかも知れません。
 おススメの一冊ですので、気になった方は書店でパラパラと読んでみてはいかがでしょうか。